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「コラボレイティブ・ガバナンス研究社会連携講座」設置記念シンポジウム 〜協働・共創は政策や地域を変えるか〜 を開催しました

2025年03月18日(火)

2025年3月18日(火)東京大学伊藤謝恩ホールにて、コラボレイティブ・ガバナンス研究社会連携講座の設置を記念してシンポジウムが開催されました。
2023年より東京大学公共政策大学院とPwCコンサルティング合同会社が継続して進めている共同研究に関するこれまでの取り組み・成果や、今後研究を進めていく「コラボレイティブ・ガバナンス」の在り方について、産官学公民から登壇者を招き、パネルディスカッションを行いました。

社会連携講座の概要と狙い
PwCコンサルティング合同会社 篠崎亮 ディレクターがモデレータをつとめ、東京大学公共政策大学院 城山英明 教授、同大学院 鈴木寛 教授、同合同会社 宮城隆之 常務執行役が社会連携講座の概要と狙いについて意見交換をしました。

まず、城山教授から「中央省庁における政策創発過程と産官学公民の政策共創」を講座のテーマに設定していること、個別の政策形成の課題ではなく、多くの政策形成に共通するプロセスと課題を分析できたことは、これまでの研究の大きな成果であると説明がありました。

次に、鈴木教授から、再現性ある形で広く実質的に「共助」の取組を根付かせる社会システムの在り方について構想することを本講座のテーマとして設定していること、同合同会社と共に地域とのネットワークを深化できたことは大きな成果であると発表いただきました。

宮城氏は、コンサルティングファームとして、クライアントの変革を支援するだけではなく、自社自身が地域の公助・共助を担う主体となる必要性を感じている中で、社会連携講座の取組は大変意義があると述べました。

本社会連携講座が個別の課題解決に留まらず、新たな政策形成のガバナンス手法や自治のあり方を形式知化することを狙いとしている旨が共有されました。

パネルディスカッションA:「共助」の社会システム構想
東京大学公共政策大学院 荒川裕貴 特任助教、PwCコンサルティング合同会社 野崎涼 マネージャーがモデレータをつとめ、福島県西会津町 株式会社会津の暮らし研究室 藤井靖史 取締役、香川県三豊市 株式会社umari古田秘馬 代表、デジタル庁 村上敬亮 統括官ぱ登壇しました。
荒川特任助教、野崎マネージャーから、人口減少や市場縮小等の社会からの影響により、縮小しつつある「公助」による住民サービスの一部を埋めるための、住民や地域組織等による「共助」を通じた取り組みの重要性についての説明がなされました。

藤井氏からは、「共助の形成過程」をテーマに、複数自治体と関わる中で「個人のやる気頼み」や「お金をもらうのが目的化すること」が、地域で起こる「共助」の取り組みを阻む要因であり、これらは各地域共通の構造的課題であると問題提起がなされました。

また、古田氏からは、「共助を支える基盤」をテーマに、三豊では、共助・資本主義・ボランティアが担う部分等を柔軟に組み合わせることで「ほしい暮らし」の実現に取り組んでいることや、地域と外部をつなぐ“外交的ローカル”の存在がカギとなって新たな共助やプロジェクトが生まれやすい土壌を形成していると発表がありました。

村上氏からは「共助を支える政策」をテーマに、「毎日動線」「週一動線」「月一動線」の視点から、地域の物流・商業・生活インフラを捉え直し、民間・行政・地域住民が連携した共助型の経営モデルが重要であると説明がなされました。

その後、登壇者によるパネルディスカッションが行われました。藤井氏からは、制度や利権構造が現場での連携や合意形成を妨げているため、共助の推進には地道な世代交代や意識変革が欠かせないこと、加えて、古田氏からは、地域商社のように大きな一社でなく、領域ごとに小さくはじめ、それぞれが共助領域で緩やかにつながることが成功の鍵であることが共有されました。
村上氏からは、人口減少下において、市民の主観的な満足や地域のウェルビーイングに応えるうえで、境界にとらわれない行政ガバナンスや組織内の横断的連携を促す仕組みの必要性、また、客観的な成果指標だけでなく、住民の主観に基づくウェルビーイング指標が重要であることが提案されました。

パネルディスカッションB:政策創発と政策共創のアップデート
東京大学公共政策大学院 中澤柊子 特任准教授がモデレータをつとめ、民間企業から株式会社PoliPoli 伊藤和真 代表取締役、株式会社メルカリ 吉川徳明 執行役員、PwCコンサルティング合同会社 萩原桐平 マネージャーが登壇。行政からこども家庭庁 横田洋和 課長補佐、内閣官房/デジタル庁 吉田泰己 企画官が登壇し、6名によるパネルディスカッションが行われました。
モデレータである中澤特任准教授からコラボレイティブ・ガバナンスについてのアカデミアでの議論の紹介とトークテーマの趣旨の説明を行ったのち,登壇者全員での議論がなされました。

まず、政策に関わる主体の変化に関しては、登壇者全員から、過去と比較して民間企業等行政以外の関係者が公共分野に関与しやすくなっている一方で、核となる業務である利害調整や政策創発への関与は限定的であるとの現状認識、問題提起がなされました。

次に、政策共創を担うエコシステムの構築にあたっては、伊藤氏から「政策の関係人口」を増加させることが重要であるとの指摘があり、吉田氏からこれを実現するためには官民の人材の流動性を高め、行政組織の変革を進めていく必要があるとの指摘がなされました。また、吉田氏・伊藤氏・萩原氏から、官民問わず政策創発の関係者に資金が流れる仕組みをつくることが重要であると指摘がなされました。

政策創発を促すために、横田氏から、政策に関わる個人と組織をどうマネジメントしていくか、異なる役割の主体が存在する中で、関係者共通の目的を設定して「腹落ち」をさせるとともに、公共政策に関わるアクターの境界が曖昧になりつつある中で、「境界線を越(超)える」ことが政策の多様性につながることが共有されました。

官民が政策を共創するためには、官側が受け入れ態勢を整えつつ、「回転ドア」で官民の人材の流動性を高めるとともに、官僚がキャリアオーナーシップを持ち政策創発のスキルを伸ばす必要があること、「政策の関係人口」を拡大させるとともに関係人口に資金が流入するエコシステムを形成する必要があるとの認識が共有されました。

鈴木教授・城山教授から、コラボレイティブ・ガバナンスに対する期待について発言があり、イベントは終了しました。

以上